ルートは自室にいた、あるまを新しい家に送り、帰ってきていた
ルートの家には代々伝わる伝承がある
“富を持たぬもの、弱きもの、すべてを守れ、それがわが一族の使命である”
これはルートの祖であるフェレスト・ウォルスが寿命を全うし、この世を去る時に子供たちに伝えた言葉だ
遠い、遠い昔にフェレストはすでに格差社会が産まれる事を知っていたのだ
ルートの部屋のドアに外からノックが掛かった
「ルート?ちょっといいかしら?」
ルートより少し大人びた女性の声、ルートの姉のアルテミスである
大抵アルテミスがルートを呼び出すときは決まっている、だが今回は別の件の様だ
「何の用?姉さん」
「何かの力がこの街に干渉している見たいなの、ルートが入ってくるゲート付近なんだけども
私が調べようとしたら弾かれちゃったのよね。ルートは問題なく通れたんでしょ?
今日も一人、富を持たないものか弱き者を保護した訳なんだし」
「とにかく・・・調べてみるしかないだろうな」
アルテミスの話を聞き、ルートは言葉にできない不思議な予感を感じた
同士か?それとも敵か?ルートの頭の中で考えが巡る
とにかく家にいては何もわからないのでアルテミスとルートはそのゲートへ向かうことにした
バチッ・・・・バチバチバチ
奇妙な音を立て、軋むゲート、ゲートからこちらへ向かって風が吹いている
「干渉している力の源はゲートの向こう側のようだ、恐らくこの風は向こう側の気流だと思う
一度俺がゲートを開放してみる、もし敵があるならこの風はもっと強いはずだ」
そういって、ルートはゲートの横にある緊急開放パネルを開き、パスワードを入力した
バクン!
ゲートが勢いよく開き、誰かが二人ほど倒れこんできた、人間の様である
「いててて・・・あれっ、見えない壁が開いた・・・?」
「力任せにやってるからこけちゃうのよ?少しは学習したら?」
二人が会話をしているところにルートが口を挟む
「俺の名はルート、お前たち、なぜこのゲートの存在に気づいたのだ、このゲートはフェリスディア・ウォルスの血を引く者と
その者に認められたものしか通ることができないゲートだ、それにお前たちは何者だ?ただの人間ではないようだが」
会話していた二人がルートのほうを向いた、一人は銀色の少年、もう一人は金色の少女だ
「ルートさん、始めまして、僕はユウといいます、こっちはリキ」
銀色の少年ユウが挨拶をする
「私たちは世界を救うため、仲間となりえる存在を探しています、何か強い力によって生成された世界になら
私たちの仲間になりえる、同じ志を持つ人物に出会えるだろうと踏んで、このゲートと呼ばれるものに干渉していたのです」
はぁ、とルートがため息をつく
後ろからアルテミスが声を発した
「ここはね、貧富の差を改善するために、一定の条件を満たされたスラムの住民を保護している世界なの
あなたたちが目的としている人物は恐らく、そこにいるルートくらいよ?
ルートは先祖の力を今までで最もより濃く受け継いだエンジェル・ハーフなの」
「!姉さん、もうその話はやめてくれといつも言っているだろ!?」
ルートが若干怒り気味に言う、その瞬間非常に強いプレッシャーが辺りに放たれた
アルテミスもユウもリキも、皆ガード体制に入っていた
「わかったでしょ?この世界にはあなたたちの仲間になれる人はいないの、でも
暫くここに滞在していく位なら問題ないはず、ね?ルート」
アルテミスがプレッシャーをガードしながら言う、アルテミス自慢のポニーテールがバタバタと重圧による風でなびいていた
ルートはそれを聞いて少しして、怒りを抑えた、それと同時に強く放たれていたプレッシャーも収まった
「・・・一週間だ、その期間だけ滞在を許そう、もしその期間に俺の気が変わってお前たちについていく時は
呼び捨てで呼んでくれてかまわない、滞在できる家まで送ってやる、付いて来い」
そう言ってルートが歩き出した、アルテミスは額の汗をぬぐいながら言った
「ふぅ・・・あなたたち運がよかったわね、いつもならルートは自分の剣を取り出して喉元に寸止めする位して追い払うのに・・・
あなたたちはこれで期待が持てるかもしれないわよ?よかったわね、ほら、早く行かないと置いていかれちゃうわよ?」
そういってアルテミスも小走りしてルートとともに歩き出す
「僕たちもいこう、リキ、寝泊りできる場所を提供してもらえるならその話に乗るしかないよ」
「うん、私もそう思う、行きましょ」
そういってユウとリキも歩き出した
一方、その頃、眠りから覚めたあるまは衣料品店にいた
ルートに言われた通り、衣装をいくつか一式で用意してくれた
とりあえずあるまは紺のスカート、紅いセーター、白い靴下、赤いブーツが気に入ってそれを着用した
ちょうど噴水の前をルート、アルテミス、ユウ、リキが通りかかる
「あっ、ルートさん、この服、どうですか?似合ってますか?」
あるまは明るい声で話しかけ、くるっと回ってルートに新しく着替えた服を見せた
「うむ、やっぱりきれいな服を着るにふさわしいな、飯は放送をかける、そしたらウチへ来い、
この街の決まりごとでパーティーを開く日でな、街の皆が参加するから是非来てくれ」
アルテミスは思った“ルートも隅に置けないなぁ、でもルートは異性にほんのちょっぴりでも興味がないんだからもったいない・・・”
「あら・・・?そちらのお二人は・・・?」
あるまが首をかしげながらユウとリキを見つめた
「この二人は予期せぬ来訪者だ、今日から1週間この街に滞在することになったユウとリキだ
仲良くしてやってくれ」
そういうとあるまはにっこり笑って挨拶した
「私は鴨直あるまって言うの、ユウさん、リキさん、よろしくね!」
「うん、よろしくね、あるまちゃん」
ちゃん付けでユウがあるまを呼んだときリキがユウの足先を思いっきり踏んだ
「あだだだだっ!?何するんだよリキ!」
リキはツーンとそっぽを向いてしまった、ヤキモチだろうか?
“何よ・・・私のときは呼び捨てなのに・・・そりゃ小さい頃から一緒だけど・・・”
ルートがあるまの家より一回り大きな家を指し、口を挟んだ
「とりあえず、ユウ、リキ、お前たちが滞在する家はこっちだ、二人で寝泊りする分には十分な大きさのはずだがどうだ?」
「わぁ、十分です、ルートさん、ありがとうございます」
リキが表情を一転させて家の方へ駆けていく
「・・・どうしたんだ?なにかリキの気に障ることでもしたのか?ユウ」
「いつもの事だから気にしないでください、いてて・・・」
ユウも踏まれた足を気にしながら家へ向かっていった
ユウとリキ、二人との出会いがルートたちの作り出したもう一つの世界、アラカレデムにどんな影響を与えるのだろうが
それは、神すらもわからない
キャラ出展:ユウ、リキ「元素空間著 ATTRIBUTE」