ルートとユウとリキの力が合わさり、無事ファリアスから脱出することに成功したルート達
緊急回避的にイケムルネスに帰る事となった


「イケムルネス・・・また帰ってくることになるなんて・・・ね」

あるまが脱力し、座りながら言った。
あるまには育ててくれた人の死、オッドアイによる差別、思い出すのもおぞましい程の虐め
そんな酷い思い出しかないイケムルネスはあるまにとって居心地がいいとはお世辞にもいえなかった

「すまんな・・・またこの世界に戻ることになって・・・
だがこのエリアはスラムから離れた富豪エリア・・・要するに金の亡者の巣だ
俺みたいな連中もいるっちゃいるが・・・期待はできない」

ルートがあるまに言った後、少しはなれて座った

「私・・・あのスラムではいつもいろんな人から差別とか虐めとか受けてて、
今もこうして話せるのが不思議なくらい辛かったの
でも・・・ほんの少し、ルートさんに出会ったら気持ちが楽になったの・・・
何でかしらね・・・?不思議ね・・・やっぱりルートさんは救世主なのかしらね」

あるまがすこし近づいてルートの隣に座った

「ん・・・俺は俺で差別とか経験あるんだが・・・背中にスティグマが6つもあるせいでな
まぁ、俺は男だからもしかしたらあるまほど酷い虐めではなかったかも知れないが・・・
姉さんはスティグマの所為で輪姦までされたんだぞ?今こそ気丈に振舞ってるがな・・・
今でも時々フラッシュバックすることがあるらしい、やっぱり辛かったんだと思う」

ルートが空を見ながら言った
ルートの視界にニュッとアルテミスが顔を出した、ちょうど寄りかかってる壁の頭上に窓があった

「ルート、今私の過去話してなかった?」

鋭い、勘が冴えるのもアルテミスの特徴である

「いいや?俺の過去は話したが姉さんの過去は話した覚えはないな」

そう、といってアルテミスは窓から顔を出すのをやめて窓を閉めた

その頃、ユウとリキは再構築されたゲートの前にいた

「入ってきたときと同じ形だね、同じ世界に通じてるのかな・・・」

興味深そうにユウが見入る、リキがユウに言う

「一応一週間、つまり後6日間居ないと帰れないはずよ?ルートさんの術でゲートは開かないはずだし」

そうだよなあ、とユウがあきらめた顔をしてきた道を戻り始める
リキもそれに続いてルートの家へ向かった

ルートと話してたあるまは今日のゴタゴタのせいもあって、話の途中で寝てしまったようだ
やれやれ、とルートは仕方なくあるまを抱き上げ、来客用の寝室へ運んだ
静かにルートが離れようとするとクッと後ろから引っ張られた
ルートが振り返ると眠ってるはずのあるまの手が服の裾をつかんでいた

「・・・仕方ないな・・・」

ルートは手をそっと解き、ベッドに乗せた
その後テーブルのある場所からイスを持ってきてベッドの脇に置き、そこにルートが座った

(・・・こういう時俺はどうすればいいのか知らない・・・俺にない物を皆持っている・・・
それが何なのかは大体予想が付くのだが、やはりピンとこない・・・どうすればいいんだろうか)
いろいろルートが考え事をしているとルートにも睡魔が襲ってきた
当然である、2度の時空間移動を立て続けに行ったのだから
魔力も霊力もほとんど使い切った状態なのだから・・・


翌日・・・

ルートは気づくとベッドに寝ていた、横に裸のあるまが居た、とかそんなことはなかった、が
自分が持ってきたイスはそのままだった、恐らくあるまが起きた後、ルートをベッドに運んだのだろう

「・・・もう少し寝るか・・・」

そういってルートはまたベッドに横になって眠りに付いた
だがルートは気づかなかった、同じ区画の別の部屋ではあるまがシャワーを浴びていた事に
防音性が高いので気づかないのも当然ではあるのだが・・・

シャワーを浴びながらあるまはひっそりと泣いていた
自分が受けた虐めなど、アルテミスが受けたモノに比べれば自分の方がマシだったと言う事
それを話したのにアルテミスには嘘をついた事
自分を助けてくれたルートに対して申し訳なさがあふれて、涙が溢れ出す

シャワーの音に泣き声が、シャワーのお湯に涙がかき消される、彼女もまた、優しいのである
虐められた経験を持ちながら、優しい心を保てたのは生前、いつもあるまを助けてくれてた
町の皆が彼女の心の支えになっていたからである

だが、あるまを異形の者としてしか見ない連中の集中攻撃の際に
皆自分を守ればよかったはずなのにあるまをかばって死んでいった

皆は死に際に、口をそろえていった
“なんでかばったんだろうな・・・自分が逃げればよかったのにさ・・・
多分俺も・・・お前をかばってくれる皆も・・・お前のことが大好きなんだろうな・・・
もう俺は・・・ここでさようならだ・・・が・・・いつの日か・・・お前にも・・・
お前を幸せに・・・する誰・・・かが現れるはず・・・だ・・・”
と・・・

一人、また一人とあるまをかばい死んでいった皆は、
あるまを本当の娘、はたまた孫のように大好きで、守りたかったのだろう
しばらく泣いた後、あるまは立ち上がってシャワーを止めた

そして身体を拭き終わったあるまは鏡の前に立った
あちこちに青アザができていた、それも服に隠れて見えない場所にばかり
全てルートと出会う前に受けた傷だ

ふぅ、とため息をついてあるまは服を着始めた
ルートの座っていたイスに座り、ルートの寝顔に目をやる

(こんな顔して寝るんだ・・・ルートさんって・・・)

トクン

心臓が一度、高く跳ねた

あるまは胸に手を当て、まさか・・・ね・・・と思った
もちろん、今までこんな気持ちになったことはないし、恋をしたいなんて思った事はなかった

あるまが悶々してる頃、アルテミス、ノース、サウスは敷地にある畑に出かけていた
ちょうどこの時期、トマト、キュウリ、ナス、とにかく夏野菜がたくさん実っているのである

「兄さん遅いね・・・まだ寝てるのかな・・・?」
心配そうにノースが言う

「まー、2度も時空間移動を行ったんだし疲れきって寝ちゃってても仕方ないよね」
アルテミスがナスを収穫しながら言う
サウスは黙々と収穫していた


ユウとリキはその頃屋根に寝そべっていた

「ユウ、やっぱりルートさんって仲間に引き込めないかしら」

「多分無理じゃないかな・・・やっぱり彼にも使命がありそうだし・・・」

ポツポツと話すが、会話が続かない、二人とも妙に気まずいのだ
自分達が入り込んでその翌日にアラカレデムの崩壊、神々の都ファリアスへの侵入、イケムルネスへの帰還
三つの出来事が立て続けに起こったのだ、気まずくないはずがない

「リキ・・・ルートさんに頼んでゲートをあけてもらった方がいいと思うんだけどどう思う・・・?」

「私はとりあえず今の状況が嫌ってわけじゃないけど、早く戻って他のアトリビュートを探したいってのもあるわね・・・」

うーん・・・と二人は唸った
二人が出した結論は期日までここに残る、という結論だった


あるまはまだルートの寝顔を見続けていた、がさすがに日が暮れて、寝る時間になって寒くなってきた

「ルートさんなら間違いは・・・ないよね・・・?」
ルートがもぞもぞ動いて少し場所を空けた、聞こえていたのだろうか?
あるまはルートが空けてくれた場所に入り込む
そっとルートの背中に手を触れる、確かに傷跡らしきものを服の上からでも感じることができる
多分その傷にあの翼の付け根が来るんだろう、とあるまは思った
そしてえも居えぬ眠気に襲われ、眠りに付いた

ルートに対し何かを感じたあるま、さて、これからどうなるのだろうか?

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キャラ出展:ユウ リキ 「元素空間著 ATTRIBUTE」

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