突如ルートたちを襲った魔族は夜明けとともに撤退して行った

「いきなり魔族が襲ってくるとは・・・いったい何が魔族側であったんだろうか」

ルートが剣を収め言う、今まで魔族が襲ってくる事は無かったのである
一応神族と魔族で協定が結ばれており、堕天使に対し奇襲を行う事は禁じられているのだ
だが、それを良く思わない魔族のグループが存在している
俗に言う過激派だ、彼らは神族と協定を組み、それを遵守する魔族を嫌っている

「あのー、ルート?なんか私の右手に光が集まったんだけど、これって能力なのかな?」

あるまが扉を開けて出てきた、右手に光を宿している、非常に神々しい光を放っている

「・・・まさか、ライトオブアームズ・・・か・・・?伝承でしか聞いた事が無い能力だ
伝承によればフェレスト・ウォルスが使っていた能力だそうだ
その後誰一人として使えなかった能力・・・と聞いている
一応今まで契約者、および俺たちが覚醒させた能力は記録されているが・・・」

「私の能力、ライトオブリボルバーアローも記録されてるわよ
もっとも、過去に使われた能力が発現するのはルートを含めて二人目ね
私たちの一族の能力はそれぞれの個人専用で、特別な事が無い限り
他の一族が使える事はほとんどないのよ」

アルテミスがルートの横から口を挟んだ

「そうなんだ・・・確かにすごく力があふれて来るけど
何だろう、使ったら止まんなさそう、私に制御できるのかな・・・?」

あるまが心配そうに聞くそれに対してルートが応える

「厳しい事を言うようだが、今のままでは確実に力に意識を乗っ取られるだろう
だが、待機状態を維持できているなら少し修行を積めば扱い切れるだろうな
本来その能力自体がものすごく強い自我を持っていて、乗っ取られてもおかしくないのだが
あるまの持つ何かでその自我が暴れだしてないようだな、やっぱりあるまは不思議だ」

「うーん・・・修行って言うと難しいイメージあるんだけど・・・
私にもできる?あんまりにも厳しいと私無理かも・・・」

あるまが困った顔でルートに聞いた

「ん、あの最初の夜を耐えれたなら平気なはずだが、
何、俺も手伝うさ、一人でやる修行では・・・ないからな」

ちょっと気難しそうにルートが言った

「どんな修行なんですか?」

あるまが聞く

「力を使い、制御できるまで組み手を行う、それだけだ」

ルートが少し大変だぞ、とでも言うような目で言った

「え?それだけ・・・?」

「とは言っても、力の重圧がすごく、耐えられない場合は即座に俺が封印術式で能力を封じる」

ルートが右手に魔法陣を出し、消した

「じゃぁ、早速お願いしていい?私も戦えるなら、ルートたちにまかせっきりにはしたくないの」

腰に両手を当て、ちょっと得意げにあるまが言った

「今からか・・・?まぁ、いいのだが下準備が必要だ、少し待っててくれ」

そういってルートは家の中へ入っていった
しばらくすると結界術の壁のようなものが敷地の境界線上に出現し、空には結界の天井らしきものが張られた

「準備完了だ、組み手を開始しよう、いつでもこい」

ルートがいつもの衣装とは違う、何か格闘技で使いそうな衣装に着替えていた

「私はいつもの服のままでもいい?」

そうあるまが聞くと問題ない、とルートが言った

「えーっと・・・右手に意識を集中すれば力がわいてくるから・・・こうね」

そういってあるまが集中した様子を見せると、一気に右手が輝きだした
ライトオブアームズのパワーだ、相当なエネルギーを秘めているようだ

「ふむ、やはりライトオブアームズか、ジャッジメント・レイのパワーとほぼ同等か
さぁ、かかって来い!憑依装着、始祖光鎧!」

そういうとルートが光り輝く鎧に包まれる
この能力はルートだけの能力ではなく、ロード・フェリスディアが使用していた能力である
先祖の力を体に憑依させ、鎧とする特殊な能力だ

一瞬、あるまが動いたかと思うとすでにあるまの右ストレートがすぐ近くまで近づいてきていた
とっさにルートが右手を出し、ガードする

ガゴォン

鈍い音が響く、ライトオブアームズと始祖光鎧が真正面からぶつかったため
双方にダメージは無いものの、威力は凄まじいものである

「うあぁぁぁあ!」

すぐにあるまが右腕を引き戻し、左手でルートを捕まえようと左腕を伸ばしてくる
だが、ルートはその行動を利用し、ぶんっとそのまま勢いを利用し投げた
が、投げた先は結界の壁、上手く踏み台にして反射し、さらに勢いをつけてあるまが攻撃してくる
だが、ルートはそれを直撃で食らうほどバカではない、ひらりとよけて言った

「直線過ぎるな、そんなのじゃ最低限の移動で回避されてしまうぞ?
もっと自分の感覚を研ぎ澄ませて、相手の急所に一撃を加える勢いで攻撃して来い!」

もうもうと立ち込める煙から、あるまが飛び出して攻撃してきた
さすがにこれはルートも予想していなく、攻撃をまともに食らう
ルートは踏ん張ったつもりだったが、一気に空高く吹っ飛ばされてしまった

「今のはいいぞ!その調子で力を制御するんだ!」

ルートは3対の翼を出現させ、一気に高速戦闘を始めた
ギュンギュンと不規則に動くルートをあるまは捉えきれなくなり、その場に立ち尽くした

「高速に動いてても本体は一つ・・・研ぎ澄ませてやるしかないわね・・・」

フェレスト・ウォルスの意識があるまの心に直接話しかけた
それに驚いたが、それしかない事は理解していたので素直に従った
すぅっと息を吸い込んで、目を閉じた
あるまが意識を集中すると、次第に雑音が消え、ルートが風を切る音が聞こえるようになってきた
位置もかなり把握できるようになってきた

「あら、上手じゃない、後は相手の隙をついて、一撃を入れるだけよ
私の力、ライトオブアームズは一撃必殺の攻撃だから」

ルートがあるまの後ろにビタッと止まり、拳を突き出す
だが、精神を極限まで研ぎ澄ましたあるまはそれを最低限の行動で回避した

ルートが驚いた表情で見上げる、がその時すでにあるまは拳をルートめがけて打ち下ろしていた

ズンッ!!!!・・・・コォォォォォ・・・・

震度3弱だろうか、それなりに地面が揺れて、地響きが鳴った

「・・・まさかここまで早く力を使いこなすとは・・・」

ダメージをまったく受けていないようなそぶりでルートが立ち上がった
その姿にはすでに始祖光鎧の輝きは無く、いつものルートの姿に戻っていた

あるまはヘタッと座り込んだ

「私・・・あんなにもパワーでるんだ・・・可笑しいよね・・・強くなったのに怖いだなんて・・・」

肩をさすり、動揺するあるま、それほどまでにフェレスト・ウォルスの力が凄まじいのだ
ルートがあるまの横に行き、肩を抱き寄せる、まるで“俺が居る、大丈夫だ”とでも言うかのように

いい雰囲気なのだが、ここでアルテミスが口を挟んだ

「はーい、いい雰囲気の中悪いけど、あるまちゃん、そこ、貴方が直しておいてね」

ルートが座ってない側のあるまの隣は結構大きなくぼみが地面にできていた
おそらくルートを倒した時の威力がそのまま地面にも伝わったのだろう

「姉さん・・・今ちょっとあるまには無理だろ、俺が代わりにやっとくから、姉さんも自分のやる事やるべきじゃ?
久しぶりに弓を使ったんだから、自分の武器のメンテナンスくらいしておかないと、また中央からバキッと折れるよ?」

“いっけない!”そういってアルテミスが家の中へ戻っていった

「あるま、とりあえず深呼吸して、少し落ち着け、一応これで修行自体は終わった事になるんだ
あるまはもう力を完全に使いこなしたんだ、安心しろ、力に乗っ取られる事は無い、な?」

ちょっとルートが困惑した感じであるまを慰める


力を完全に使いこなしたあるま、そしてまた夜が来たが
今夜は魔族は襲ってこなかった


一方そのころ、魔界では

「こんのアホンダラァ!なに勝手に襲い掛かって全滅しかけて帰ってきとんじゃ!
アホかワレェ!あいつらに手を出すとワイ等もクビが飛ぶねんぞ!」

上位魔族だろうか?下位魔族を叱り飛ばしていた
なんというか、めちゃくちゃ怖い上司みたいな感じみたいだ


さて、この先いったいどうなる事やら

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